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黛 潤一郎 CGのお仕事でサウジアラビアのリヤドに滞在中です。どうでもいい様な他愛も無い事を日々書き連ねているブログですが、どうぞ宜しくです。


by KuronekonoKujira

砂漠のオアシス、心のオアシス

先週末のお話。

いつも通勤やどこかへ出掛けるときに必ず見えるのが、我がコンパウンドのご近所ではためく巨大な国旗。距離にして2Kmくらいでしょうか。相当離れても見える事から、かなり巨大なものだとは思っていましたが、ふもとまで行くと、それはもう笑ってしまう程の巨大さでした。どれほど巨大かと言えば、巨大すぎて数値的にはどの程度なのかピンと来ませんので、写真から想像してみてください。

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これが巨大サウジ国旗

この日は、ちょっとこの旗周辺を散策してみようと言う事になりまして、いつもお願いしている運転手さんにお願いして、ふもとまで連れて行ってもらったのです。この日は良い天気で、日中はもうそろそろ暑いくらい。と言っても、この所の気温は上がったり下がったりで、やけにヒンヤリ肌寒い日もあれば日中は汗ばむような日もあります。昼間の気温は25〜32℃ってところ。日本の常識から言えばかなり暑そうですが、湿度は低いので暑い日と言ってもまだまだ爽やか。朝晩に至っては涼しくてとても過ごしやすいのです。ずーっと一年中こんな感じだと良いのですがねぇ。あの50℃の熱風が吹き荒れる夏ももうすぐそこです。

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ふもと付近から。根元の黒い点が人です。

巨大な旗の下から5分も歩くと、高い塀で囲まれた、うっそうと茂るヤシの木の林が広がっています。更に5分程歩き、入り口らしきところを発見。「ここは一体なんだろう?」と覗いていると、中からインド系の使用人らしき人が現れたので訊いてみると、英語はほとんど通じなかったものの、「とにかく、入って見ていけ」と言いながら手招きをするのです。「それじゃあ、せっかくだし」という事でついて行きます。すると中からトーブ(中東のあの白いゾロッとした格好です)姿の数人のサウジ人らしき人たちが現れ、話しかけられました。どうやら、ナツメヤシ(デイツ)のファームらしい。巨大なヤシを指差して、「あれは樹齢120年だよ」なんて説明をしてくれます。また、デイツだけではなく、ちょっとした野菜の畑があり、ヤギ、ウシ、シカなども飼っているようで、リヤド近辺ではなかなか見られない、豊かな緑と豊富な水量に驚くばかりです。水量と書きましたが、大きな貯水槽になみなみと水が溢れ、デイツ林中に小さな水路が張り巡らされ、ここだけは、とても周りが砂漠だとは思えないような爽やかな空気に包まれています。

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それらの緑や水の維持は、現在ではきっとお金に任せて引いた、水道に寄るものなのでは無いかと思うのですが、ここへ来て初めて、このリヤドという街が砂漠のオアシスに作られているのだ、ということを実感しました。

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また、ここの人たちの親切な事といったら、思わずこちらが恐縮してしまう程。どこの馬の骨かもわからない、突然訪れた我々を部屋に招き入れ、エアコンとテレビをつけて「食事はどうか」とまで訊いてくる(本当はもっとファームをゆっくり見たかったのですが…)。流石に申し訳ないので食事は断りましたが、ワラワラと次から次へと現れるサウジ人のオジさんたちに、ちょっと困ってしまいました。彼らは、毎週木曜日(日本で言うところの土曜日に当たる)にこの農園に集まって食事をするそうで、たまたまそこへ我々が現れた、と、そういう事だったようです。オジさんたち曰く、「毎週集まっているから、またおいで」と言う事でした。

少々、彼らと話をしましたが、やはり我々のような日本人は珍しく、特に若い女性が数人いた事もあって興味を引いたようです。時に日本の大地震でのダメージが世界中で報道され続けている最中と言う事もあり、彼らはその辺の話を聞いてみたかったようでもあります。もちろん、最近はどこへ行っても「日本は大丈夫か?」と訊かれる事が多い訳ですが、とりあえず「うーん、あまり大丈夫じゃないよ」と答えると、皆一様に気の毒そうな表情になり、「でも、すぐに復興するさ」と言うと、「そうだよな」と明るい顔に戻ります。本当に皆良い人たちばかりです。

そして、一人のご年配のサウジ人が一生懸命語るのは家族のあり方について。「祖父母から父親母親、子供達まで全部一緒に暮らしてこそ家族なんだ、日本では家族は皆一緒に住んでいるか?」と。それに対しては「日本では地方へ行けばそういう家も多いが、都市部では、ほとんど核家族化している」と答えると、とても残念そうでした。サウジアラビアでも核家族が増えてきているのを嘆いているようでもありました。

そういえば、以前会ったサウジ人は、日本に行った際に、「祖父母の車椅子を押し介護する孫や息子夫婦、といった家族の姿を多く見て、日本は素晴らしい」と語っていたのを思い出しました。その方が見たのは偶々だったのかもしれませんが、家族をとても大切にするというサウジ人の気質が現れている話だな、なんて変に感心してしまったものですが、やはり、そうなんですね。

そして別れ際、「君たちは車で来たのか?」と訊かれたので、「そうですよ」と答えると、10kgはある大きな箱を持ってきて「フレッシュなデイツだ、持って行きなさい」との事。もう恐縮しまくりです。こんな見ず知らず我々に対して、こんなにも親切にして気前よく土産まで与えてしまって良いものでしょうか?さらに、最初からずっと案内してくれていたインド系の使用人らしきオジさんがその箱を担ぎ上げ、車まで運んでくれると言って我々についてきます。車の待ち合わせをした場所までは歩いて10分程度は離れていたので、あまりに申し訳なく、僕ともう一人の仲間だけその場に残って、別の仲間に車を呼んできてもらう事にしました。

そして、車を待っている間の事です。真っ黒な高級車が急に僕らが待っているところに停まったので、何かと思うと、窓が開き、先ほどのサウジ人のオジさんが顔を出します。どうやら、僕らが車を持っていなかった事に気づいて、送りに来てくれた模様。「家まで送ってあげるよ」とオジさん。もちろん、すぐに迎えがくる事を伝え、お引き取り頂きましたが、その親切さには、とにかく感動しきり。——なのですが、どうもそれ以上に恐縮してしまって逆にちょっと居心地の悪さを感じたりして、なんとも申し訳ない。ああ、やっぱり自分は日本人なのだなあ、などと思ったりしたのでした。

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この後、キングダムの展望ブリッジに行きました。昼間のリヤドの街はこんな感じですが、ご覧の通り緑なんか全くありません。
by kuronekonokujira | 2011-04-02 03:19 | サウジ・リヤド情報